解説【アプローチ】

まぁ、サラ金の窓口レディーにリクルートされるボクもボクなんですが(笑)彼
女のリクルートがうまかったのも事実です。まず冒頭の出会いですが、喫茶店に
て彼女の方からそのビジネスについて積極的に話があったら、ボクは会場に行っ
てません。ボクの口から「それで、どんなことやってるの?」と言わせた彼女の
勝ちです。

「相手がこちらに関心を示すまでは決して手の内を明かすな」後日マニュアルに
そう書いてあるのを見ました。「関心を示しても決して教えるな」これも書いて
ありました。後日ボクはこのバリエーションを多く作り、おもしろいほど客を
GETすることになります。それもまったく知らない街で、でもそのお話はまた
今度。

少し脇道にそれますが、このビジネスは「代理店」と言うポジションにつくこと
から全てが始まります。そして通常このポジションになるために、普通は1週間
くらいしかかかりません。でもボクは2ヶ月かかりました。ボクの中の「ええ
かっこしい」の部分が、友人知人にビジネスを勧める事への抵抗を示したからで
す。「もうだめかな、むいてないのかな?」そう思っていたある夜、行きつけの
スナックで友人とその彼女に遭遇しました。聞くと彼女がよその面接会に参加し
てヤル気になってるとのこと。詳しく話を聞くと明らかにボクがやっているほう
が条件がよいように思えてなりません、そこでリクルートするつもりではなく
「今なら間に合うから、こっちのほうが良いんじゃないか」と熱く語りました。
結局彼女は「でも自分で選んだんだから頑張る」と譲りませんでした。ところが
思いもかけないことが起こったんです。

彼女の横で二人の話し合いを黙って聞いていた友達が「DQN、オレにそのビジネ
スやらせてくれ」と言ってきたんです。青天の霹靂ですが、後にして思えば決し
て彼を誘ってるわけじゃなく彼女のためにと思ってしゃべっていたのが功を奏し
たようです。その後、彼は瞬く間に友人知人を傘下に納めることになります。お
かげでボクが声をかけることの出来る友人知人は、気がつくと本当に誰もいなく
なってしまいました。

他にも、他の代理店のリクルート(招待と言います)の成功事例、失敗事例を見
るにつけ、「招待のコツはシステムを伝えることでは無く自分のビジョンやス
トーリーを伝えることにより自分やビジネスに対する関心を引くことである」こ
とに気がついたのです。後に訪販や事業をやって行く上で重要になる「アポ取
り」に対する基本的なモノの考え方が、この時身に付いたと言っても良いでしょ
う。

本筋に戻ります。ビルの入り口で待たされるあいだ、いかにも同じような境遇の
人が居ることに気がつきます。それが逆に安心感を与えてくれます。人間には
「帰属意識」があるそうですが、その心理をうまく利用したやり方です。6時
45分に会場入りと言うのも、マニュアル通りです。その後7時までの15分間
が、実は招待する側から見た勝負の時間です。室内を壁沿いでなく対角線上に移
動させるのも、心理学的な理由がありました。

対角線上に動き、わざと他人とぶつかる。そうすることで「余計なこと」を考え
ないようになります。思考の方向が限定されるんです。ヒラヒラとはためく万国
旗もその役割を担っています。そこで挨拶する人が「私もあなたと同じだったん
ですよ」と手を握り話しかけてきたのも、もちろん計算の上です。こうすること
によりこっちは見知らぬ会場内で「味方」を見つけたと錯覚します。相手に対す
る興味もわきます。「何が起こるのか怖い、でもそれ以上に見てみたいという好
奇心が大きい」そんな精神状態にしてしまうのがこの15分間なんです。

結局、面接会が始まる7時には「ヤバそうだったら帰ればよい、しつこく勧誘さ
れるかも知れないが断ることは簡単だ。良いか悪いか、自分の目で見て耳で聞い
て判断しよう」と言う気持ちでイスに座ることになります。勝負はもうついてし
まっていると言うことも知らずに。

ここまでの一連の作業から、相手を商談のテーブルにつかせる前のアプローチ方
法とガードを下げさせるための心理的な作戦がいかに大切であるか、お判り頂け
ればと思います。

次回に続く(いつになるだろう)


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